打ち直しで再生可能な綿布団を手掛け、伝統の技術を後世に伝える
取り組み内容
手の感触を頼りに仕上げる綿100%の手づくり布団
敷布団、掛け布団、座布団、こたつ布団など、綿の布団を製作・販売する寝具店・イヅモヤ。
布団に使用するのは自社工場で製綿した自然素材の綿、メキシコ綿とインド綿を7:3の割合でブレンドしたオリジナルの暖だん綿です。薄いシート状の綿を何枚も重ねて中綿を形づくっていきますが、段差をなくしつつ長持ちするように体重のかかる中央部分の綿量を多くして仕立てます。角をピンと張るように仕上げるのも重要なポイント。側生地(がわきじ)で包んでふとん専用針でとじれば完成です。すべてにおいて手の感触が頼り。昔ながらの綿の手づくり布団は、このようにして出来上がります。
東員町に店舗を構えるイヅモヤの二代目店主・伊藤道治さんは、40年にわたってこの布団づくりの技術を磨き、次世代への継承にも尽力する現代の名工です。1997年、第16回技能グランプリ優勝、厚生労働大臣賞を受賞、2006年、全技連の寝具マイスターを取得、2019年には現代の名工として厚生労働省より表彰され、さらに2021年には黄綬褒章を受章しました。現在は技能グランプリの審査員を務めています。
※寝具マイスターとは
職業能力開発促進法に基づいて実施されている技能検定制度の特急・1級または単一等級の試験に合格した技能士で、20年以上の実務経験と優れた技能及び活動実績を持ち、後進の育成並びに技能の伝承に熱心な技能士であると認定された方
良質な綿布団は、打ち直しにより再利用が可能な究極のエコ製品
既製品の布団にはさまざまな素材のものがあります。掛け布団では羽毛布団、羽根布団、羊毛布団など、敷き布団には羊毛、ポリエステル、ウレタンフォームといった素材が使われています。吸湿性、通気性、保温性、耐久性、軽い、安い、洗えるなど、それぞれ特徴がありますが、綿の布団は特に保温性、吸湿性に優れており、適度な硬さと弾力性があるのが特徴で、「暖かくてよく眠れる」「寝返りが打ちやすい」など、人間の健康の源である快適な眠りを導きます。「実際に寝てみるとわかるのですが、本当に暖かいんです」。
現在、力を入れているのはベビー布団。既製品の布団では寝付きが悪かった子供が、綿の布団に変えたらよく眠るようになったという率直な感想を聞くことがあり、保育園や幼稚園のお昼寝で綿布団を使ってもらえないかと思案中だとか。
そして何よりも、伝統の打ち直しという方法により再利用できることが、ほかの素材ではできない綿布団の最大のメリットです。打ち直すとき、薄く軽く仕立て直したり、子供の成長に合わせてサイズを大きくすることも可能。
「ただし、」と伊藤さん。「粗悪な素材を使ったものは結局粗大ゴミとして廃棄せざるを得なくなる。良質な綿を選び卓越した技術のよって作られたものだからこそ、親から子へ、子から孫へと、捨てずに大切に使い続けることができるのです。」
持続可能な産業として維持するために、技術の継承と市場開拓を
長く使える再生可能な素材と卓越した職人の技術により、打ち直すことで新品同様のふかふか感と弾力性が蘇ります。この貴重な伝統技術を、職人の高齢化が進むなかで、次世代にいかに継承していくかが目下の課題です。そして後継者を育てる一方で、手づくり綿布団のマーケットを確保して持続させることも重要です。
海外で布団づくりのデモンストレーションをしたり、県の技能協会の斡旋で中学校や高校の課外授業で座布団づくりのワークショップを開いたり、綿布団の良さをアピールするための活動を精力的にこなしています。
同店の取り組みは、ゴール12(つくる責任つかう責任)を中心に、ゴール9(産業と技術革新の基盤をつくろう)ゴール13(気候変動に具体的な対策を)ゴール14(海の豊かさを守ろう)ゴール15(陸の豊かさも守ろう)などその他ゴールに広く貢献しています。
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記事作成者:運営事務局
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